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「西郷どん」で話題!鹿児島弁はなぜ難しいのか?

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2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」の放送が始まりました。これを機に、ネット上でにわかに「鹿児島弁、何言ってるか全然わかんない」なんて意見が巻き起こっております。

鹿児島弁は確かに難解で、一説には日本一難しい方言とも言われておりますが、いったいどれくらい難しいんでしょうかね。Twitterでいい感じの動画が回ってきてたので、未見の方は一度ご覧ください。

えー、全体的にかなり聞き取りが厳しいですが、1分14秒あたりからのおじいさんの発言を書き起こしてみましょう。

「なっちなりゃー、おいどんがこめときゃ、がっこかえもどい、そこんかわに、わがえもどいちかんうち、かわせえさきいっとったやっち。」

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はい、ぜんぜんわかりませんね。

では、このおじいさんの発言を例文として、なぜ鹿児島弁が難しいのかをひもといていきましょう。

なお、本文中の文法解説は救仁郷斉さんの論文「鹿児島弁の特徴」を参考にしました。

助詞の方言が多い

鹿児島弁には「〜が」「〜に」「〜まで」などの、助詞に対応する方言がかなり多いです。そのため標準語とのギャップがかなり大きく、何を言ってるかよくわからんのですよ。

なお、大阪弁の「〜やな」、広島弁の「〜じゃけぇ」など、他地域の方言にも特徴的な助詞はありますが、その多くは文の最後につくものです。鹿児島弁の助詞は文中にも頻繁に現れるので、より難解になってるというわけ。

「に」が「い」になる

動作の方向や対象を表す助詞「に」は、鹿児島弁では「い」になります。しかも、その前につく単語によって音が変化してしまうので非常にややこしいです。

例文の「なっちなりゃー」の部分ですが、ここは「夏になれば」と言っています。「なつ」に「い」がくっついて、「なつい」→「なっち」と変化してるわけです。

動画の中では、最初に「おいどん」が出てくる部分で、「ふとかばけち、とったいおを」と言ってる箇所があります。この「ばけち」も同様の変化で、標準語になおすと「バケツに」となります。なお全体では「大きなバケツにとった魚を」という意味になります。

「の」が「が」になる

中学高校の古文で、所有格を表す「が」というのを習ったの、覚えてますか? 「梅が香」を「梅"の"香り」と訳すアレです。現代日本語では滅びてしまった用法ですが、鹿児島弁ではしっかり生き残っています。

それが例文中の「わがえ」という部分。これ、「自分の家」という意味なんです。「そいは、おいがとじゃっど(それは自分のものです)」なんて形でも、助詞の「が」はよーく使われますよ。

「へ」が「せえ」になる

「東京へ行く」などの「へ」は、鹿児島弁では「せえ」になります。

「かわせえさきいっとったやっち」の「せえ」はこれです。全体では「川へ先行ってたんだ」という意味になります。

音の変化が多い

鹿児島弁の理解を難しくしているもうひとつの要因は、音の変化です。このおかげで、標準語と同じ単語であっても、まったく別の言葉に聞こえてしまうんですね。

二重母音の「ai」が「e」に変わる

「おいどんがこめときゃ」の部分を見てみましょう。「おいどん」は皆さんご存知の通り「おれ」ですね。

問題は「こめときゃ」の部分。「こめ」の元々の形は、「小さい」を表す「こまい」です。二重母音の「ai」は「e」に変化します。

・だいこん → でこん
・赤い → あけ
・暗い → くれ

つまり「おいどんがこめときゃ」は「おれが小さいときは」って意味になります。

「ラ行」が「ア行」に変わる

次は「がっこうかえもどい」の部分を見てみましょう。ここは「学校から戻り」です。さらに「わがえもどいちかんうち」の部分ですが、ここは「自分の家に戻りつかないうち」と言っています。

鹿児島弁ではしばしば「ラ行」、とくに「リ」「ル」「レ」の音がア行に変化します。

・栗 → くい
・悪い → わるか → わいか
・これ/それ/あれ/どれ → こい/そい/あい/どい

といった具合です。

「の」が「ん」になる

「そこんかわに」はわかりやすいですね。「そこの川に」です。「の」が「ん」に変化する現象は、鹿児島弁でよく見られます。

・家の中 → いえんなか
・このくらい → こんくれ



……ということで、これで冒頭の例文がすべて翻訳できたことになります!

「なっちなりゃー、おいどんがこめときゃ、がっこかえもどい、そこんかわに、わがえもどいちかんうち、かわせえさきいっとったやっち。」

は、標準語になおすと、

「夏になれば、おれが小さいときは、学校から戻り、そこの川に、自分の家に戻りつかないうち、川へ先に行ってたんだ」

って意味だったんですね! すっきりー!!

まとめ

鹿児島弁がほかの方言と比べて難しいのは、助詞の方言と音の変化が多いので、標準語と似た文章でもまったく違う音に聞こえてしまうからだと言えるでしょう。

なんといっても、太平洋戦争中は旧日本軍が鹿児島弁を暗号として使っていたなんて逸話もあるくらいですから、その難解さは折り紙つきです。

そんな鹿児島弁が大活躍する2018年の大河ドラマ「西郷どん」! きっと半年たたないうちに鹿児島弁のセリフに字幕がつくようになるでしょう。そんなセリフの難解さも含めて皆さん楽しんでくださいね〜。