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ニュージーランド在住のプログラマがあれこれ書くブログ

【感想】「戦場にかける橋」ダメなプロジェクトマネジメントがよくわかる戦争映画!

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終戦記念日の近づく8月、戦争をテーマにしたドラマや映画が多く放映される時期ですね。

僕の愛用している iTunes でも戦争映画が特集されていたので、「戦場にかける橋」を鑑賞しました。1958年のアカデミー賞で作品賞など7部門を獲得した大作です。

舞台は第二次世界大戦中、タイとビルマの国境付近にある捕虜収容所。クワイ河にかかる鉄道橋の工事を題材に、日本軍とイギリス軍の対立と交流、戦争のむなしさを描いた作品……なんてカタい解説は Wikipedia とか映画評論家の皆さんにおまかせするとして。

自分のようなプログラマ目線からすると、これはプロジェクトマネジメント映画としてかなり興味深いですよ。

昨今のブラック企業にも通じるような、ダメなマネジメントの問題がいくつも描かれてます。異常な長時間労働を強いられるシステム開発 = デスマーチを経験した人なら、共感できるポイントが相当あるんじゃないですかね?

「斎藤大佐」はダメなプロマネの典型例

映画の主な部隊となっている、第十三俘虜収容所。ここの所長として登場するのが、早川雪洲演じる斎藤大佐です。

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彼は、タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」建設に伴う、クワイ河鉄道橋建設プロジェクトのマネージャーでもあります。イギリス軍の捕虜たちがここに連れてこられたのも、鉄道橋建設の労働力として動員するためなんです。

しかし! この斎藤大佐がとことんまでダメなマネージャーなんですよ。IT企業にいたら、間違いなくデスマーチを連発させて部下からの信頼をなくすタイプ。どこがダメか具体的に挙げていきましょう。

労働者からプライドを奪い取る

斎藤大佐は、イギリス軍兵士たちを「プリズナー(捕虜)」と呼び、決して「ソルジャー」とは呼びません。入所してすぐの演説で「降伏した兵士はもはや兵士ではない。ただの捕虜だ」と言い放ちます。

いきなり最悪ですね! 大規模なプロジェクトにおいては、作業員の士気を保つことは最も大事な要素のひとつでしょ。さらに自分たちの仕事に誇りを感じさせることも必要。「どうせ俺たちはただの捕虜だ」という意識があっては、やる気も出ないし仕事の精度も下がります。

実際、現場の作業員たちは真面目に仕事をしようとせず、河で泳いで遊んだりしてサボりまくってます。

法律を平気でやぶる

入所の翌日、斎藤大佐は、将校を含めたイギリス軍捕虜全員に、橋梁建設のための強制労働への従事を命じます。

これに異を唱えたのが、イギリス軍捕虜たちの隊長・ニコルソン大佐(アレック・ギネス)。

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1864年に締結されたジュネーブ条約で、将校の労役は禁止されています。ニコルソン大佐はこれを指摘。条約のコピーを見せ、斎藤大佐の命令が違法であることを訴えました。

ところが斎藤大佐はこの意見を完全に無視! 「卑怯者の掟に従う必要などない」と一蹴し、それどころかニコルソン大佐に機関銃を向け、3つ数えるうちに将校へ労役を指示しないと撃つぞと脅迫までしてくる始末です。

なーんかブラック企業にもこういう上司いると思いませんか? 「法律を守ってたら会社が潰れるだろ!」と労働基準法を平気で無視する管理職に似てますね。

斎藤大佐にはこのあと「何がルールだ! これは戦争だ。ゲームじゃないんだぞ!」ってセリフも出てきます。戦争にもルールがあるんですけどねぇ。法律も守れない人間に、人の上に立つ資格はありませんな。

全員の前で部下を叱責する

当初、建設現場の監督を勤めていたのは、斎藤の部下・三浦中尉でした。ところが彼の技術指導が稚拙であるため、工事は予定通りに進まず、斎藤は激怒。結局、斎藤大佐自らが現場監督を勤めることを決めます。

まぁそれはいいとして、問題なのは、日本軍将校やイギリス軍捕虜達、全員の目の前で「無能な彼に工事を指揮する資格はない」と叱責する部分です。

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ダメですよこんなことしちゃ! 本人の自己評価を必要以上に下げて萎縮させてしまうし、ほかのメンバーも叱責を恐れて行動するようになります。大規模プロジェクトでは作業員の士気を削ぐような行為は慎まなきゃ。

褒めるときは全員の前で。叱るときは見えないところでってのが基本です。これじゃイギリス軍だけじゃなく日本軍からも信頼を失いますね。

部下からの進言に耳を貸さない

さて、三浦中尉を更迭し、自ら現場監督についた斎藤大佐ですが、工事はそのあとも全然予定通りに進みません。困った斎藤はニコルソンを呼び出し、「どうしても人手が足らない。下級将校だけでも労役に就かせるというのはどうか」と妥協案を示します。とはいえ、これでもジュネーブ条約違反なんですけど。

それに対してニコルソンは、「日本軍でなくイギリス軍の将校が指揮を取れば、兵士たちはよりやる気をもって働ける」「イギリス軍には橋の建築に精通した人材がいる。彼らの知識を活かしてはどうか」と、別の視点からの解決策を提案しました。

が! 斎藤大佐の反応はまたしても「イギリス人は負けたくせに恥を知らない!」と激昂。まったく聞く耳を持ちません。

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お前たちは捕虜なんだから黙って言うことを聞いていればいいんだ、とでも言いたげな態度ですね。斎藤大佐自身、「建設が期日までに間に合わなければ自殺しなければいけない」と漏らすほど大事な工事なのに。その目標達成のために、ニコルソンが真剣に提案をしてくれているというのに。

「立場が下の人間の言うことなんか聞くものか」っていう変なプライドが邪魔して、本来の目的を見失っています。だめだこりゃ。

まとめ

ここに挙げた以外にも、斎藤大佐の振る舞いには色々と文句をつけたいところが多くて困ります、笑 まぁイギリス人を虐げる野蛮な日本人っていうキャラクターとして脚色されてるので仕方ないかなって部分もありますが。

にしても、こんな人がリーダーで、しかも作業員が無理やり連れてこられた人たちばかりじゃ、そりゃプロジェクトは前に進まなくて当然でしょ。

IT業界に例えるなら、炎上プロジェクトに追加要員として大量の派遣社員が用意されて、プロマネが彼らを毎日限界まで働かせてるような状況でしょうか。人手だけ増えたってどうしようもないんですよねー。斎藤大佐には是非、「やる気こそプロジェクト成功の秘訣」という名言で知られる名著『ピープルウエア』を読んでいただきたいところであります。

自分の職場の上司、斎藤大佐に似てるなーと思ったら、転職を考えたほうが良さそうです。捕虜収容所は脱走すると撃ち殺されますが、職場なら逃げ出したところで自分が幸せになるだけですからね!