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【書評】『完全残業ゼロのIT企業になったら何が起きたか』長時間労働に苦しむ経営者&社畜必読の一冊!

株式会社アクシアという企業がある。東京に本拠地を置き、システムの受託開発を主に手がける会社だ。

この会社には、残業がない。

「残業代が出ない」でもなく、「裁量労働制だから」でもない。文字通り、残業がない。

定時になったら社員もアルバイトも一斉に事務所をあとにし、オフィスから誰もいなくなってしまうという。(念のため書いておくけど、始業時間前に仕事してるわけでも、仕事を持ち帰ってるわけでもないからね)

ところがこの会社、4年前までは月の残業時間が200時間という超絶ブラック企業だった。しかし、ある事件をきっかけに社長自ら改革に乗り出し見事残業を撲滅。今年2017年にはホワイト企業アワードの労働時間削減部門で大賞を受賞するまでになったのだ。*1

『完全残業ゼロのIT企業になったら何が起きたか』は、この会社がいかにして変身を遂げたか、その軌跡を追った詳細なレポートだ。

残業をゼロにしたら、売上が増えた

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このごろ、ワークライフバランスの重要性が叫ばれて久しいが、世の中の経営者としては「残業なくしたら仕事が回らないよ!」が本音ではないだろうか。

著者である米村社長自身も、長時間労働の問題は把握しつつも、残業をゼロにしたら売上が落ち、会社の経営が立ち行かなくなるのではないか……と心配していたそうだ。

しかし、結果はかなり衝撃的なものだった。

アクシアから残業がなくなったまさにその月、売上が前月より27%もアップしたのだ。

IT業界は生産性が変化しやすい産業なので、短時間の労働で大きな成果を出せることもあるが、それにしても200時間の残業をゼロにして27%アップは驚異的といえる。これはさすがに想定外だったそうだ。

残業がないと仕事が回らないどころか、売上が上がった。この事実ひとつとっても、日本中の経営者に本書が与えるインパクトは大きい。

また、システム開発といえば、突発的な障害にも対応するために定時外の対応を求められる場合がある。これがネックになり残業削減に二の足を踏んでしまう会社もあるだろう。

しかし、実際に「18時以降は働きません」と宣言してみると、方針に賛同してくれるクライアントがほとんどだったとのこと。なんとも拍子抜けだがこれが事実だ。

残業しないと食いっぱぐれるのではないかと、存在しないリスクに怯えながら、無意味な長時間労働を続けているのがITの世界なのかもしれない。そんなの早いとこ辞めたほうがいいに決まっている。

残業をゼロにしたら、優秀な人材が集まってくる

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アクシアは小さな会社でありながらも、東大や早稲田といった一流大学卒のエンジニアが働いている。大企業でもないのに、これは非常に珍しいことだろう。残業がなくなり、働きやすい職場になったことで、優秀な人材が集まりやすくなったのだそうだ。

また、多数の女性社員が活躍しているのも特筆に値する。当然のことだが、残業が当たり前の企業では体力のある人間しか生き残れず、女性にとっては働きにくい。「長時間労働さえ無ければ働けるのに……」と思いながら、職場に戻れずにいる優秀な女性が、実はかなりいるのだ。

本書中には、現役社員へのインタビューも掲載されている。それを通して、やらせも何もなくホントに働きやすい環境なんだなってことが伝わってくる。

まだアクシアがブラック企業だったとき、米村社長は少しでも職場環境をよくしようと、飲み会を開いたり観葉植物を置いたり(汗)と、いろんな小技を試したそうだが、まったく効果がなかったそうだ。

残業ゼロにまさる職場改善はない。実際に働いているエンジニアたちの声が、それを証明している。

人口が減少に転じ、どんどん人手不足になっていく日本において、「定時後もバリバリ働け、それができないやつはいらん」というような強気の採用戦略は通用しない。

これからの優秀な人材は、ただ有名なだけの大企業ではなく、働きやすい環境のある会社に流れていく。中小企業の生き残りは、それに気づくかどうかにかかっているだろう。

まとめ ー もはや残業をゼロにしない理由がない ー

世の中には、まだまだ「残業がないと会社が回らない」と信じている人が多くいる。しかしそうではない。

残業をすればするほど、生産性の低い働き方が続き、売上は落ち、優秀な人材は逃げていくのだ。もはや、残業を積極的に続ける理由はどこにもない。長時間働くことが正義とされた時代はとっくに終わった。

ところで、アクシアがどうやって月200時間もの残業を克服し、毎日定時で帰る会社になったのかについてだが、それは最も重要な部分のネタバレになってしまうので、ここではあえて触れない。ただ、あっけないほどシンプルで、小さな会社でこそ役立つ方法とだけ述べておく。ぜひ本の中で確認してほしい。

残業ゼロは、一部の特別な企業だけのものではなく、どこででも実現できることを教えてくれる一冊だ。


著者である米村社長のTwitterアカウントは @yonemura2006 。IT業界の残業問題に関心のある人はぜひフォローを!