Contents
理由1: 失敗プロジェクトではよい経験ができない
なぜデスマーチが発生するのか? もちろんプロジェクトが失敗しているからですね。
デスマーチに巻き込まれるということは、失敗したプロジェクトに長時間身をおくということです。それで何が身につくのでしょうか?
その時間、別のもっと成功しているプロジェクトで働いたほうがずっといい経験ができると思いませんか?
世の中には、「一度デスマーチを経験しておけばいい勉強になる」と主張する人もいます。
しかし、わざわざ失敗しないと勉強できないというのは愚かです。別にデスマーチを経験しなくても、どうすればデスマーチを回避できるのか、知識として身につけておけば良いのです。
どうしても経験が必要なら、あなたが経験する必要はありません。誰かすでに経験したことのある人を連れてこればいいだけの話です。
理由2: デスマーチに留まると精神と体力に異常をきたす
デスマーチ中は、食事も睡眠もろくに取れない日々が続きます。しかも、いやいや参加しているわけですから、ストレスでいろいろな部分に異常が出てきます。
筆者の参加していたプロジェクトでは、
- 全身に謎の発疹が出る
- うつ病を発症する
- 帰宅した途端玄関で倒れ救急車で運ばれる
- 職場から突然いなくなり2週間休職する*1
などの事象が続発しました。
そこまでして仕事をする理由などどこにもありません。ヘタすれば過労死します。その前に逃げるのは当たり前のことなのです。
理由3: デスマーチを起こしたマネージャは、またデスマーチを起こす確率が高い
絶賛デスマーチ中だけど、もうすぐ終わるから……と思っているあなた。
甘いです。
デスマーチを引き起こしたマネージャは、しばしばまたデスマーチを起こすのです。なぜなら、マネージャとして無能だからです。
もしあなたが社内の情報に詳しくないのであれば、ベテラン社員の方に今のマネージャの「前科」を聞いてみてください。直近にデスマーチを引き起こしていれば、また起こす可能性が大です。
わざわざそれに付き合う必要はありません。あなたはまったく悪くないのに、なぜ非人道的な労働をしなければならないのですか? あなたはそこまでマゾではないはずです。
理由4: あなたがいなくなったところで、誰も困らないし、責められない
デスマーチと化したプロジェクトでは、時として奇妙な一体感が生まれます。
メンバー全員、こんな働き方は異常だ、はやく帰りたい、明日会社が無くなってればいいのに、と思いながら、みんな終電まで粛々と仕事をこなすのです。このような雰囲気では、仲間を置いて自分だけいなくなるなんてできないと考えてもおかしくありません。
しかし実際には、あなたがいなくなっても誰も困らないのです。
最初は現場はパニックになるかもしれませんが、そのうち落ち着きます。追加人員が入るかプロジェクトがポシャるかどちらかでしょうか、落ち着きます。だから心配しなくていいのです。
だいたい、そのプロジェクトを管理するのはマネージャーの責任ではありませんか。
あなたは決して責められることはありません。なぜなら、あなたはプロジェクトメンバー全員の気持ちを代弁し、実行したのですから。
むしろ、勇気ある人間として讃えられます。それでもためらう気持ちがあるのなら、労働基準監督署に相談してください。いまの労働環境の劣悪さを切々と語れば、きっとあなたの味方になってくれます。
理由5: 会社都合退職扱いにできる可能性がある
ハローワークのウェブサイトに、「特定受給資格者」についてこんな記述があります。
(5) 離職の直前6か月間のうちに
いずれか連続する3か月で45時間、
いずれか1か月で100時間、又は
いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
自己都合退職した場合は失業保険の給付までしばらく時間がかかりますが、特定受給資格者であれば退職後即座に給付が受けられるのです。上記の残業時間はデスマーチプロジェクト直後であればかるくクリアしていると思います。ひどい労働環境が原因で辞めるのですから、しっかりもらえるものはもらっときましょう。
理由6: あなたが辞めることで、後輩のためになるかもしれない
長時間の残業が原因で社員が辞めたとなれば、それがきっかけで会社の環境が変わる可能性もあります。
デスマーチを防ぐための取り組みがはじまったり、何度もデスマーチを起こしたマネージャは降格されたりするかもしれません。またあなたを見習って退職する社員が続々増えれば、会社そのものがなくなるかもしれません。そうなったらなったで、淘汰されたということ。いずれにせよ、後輩たちがデスマーチに巻き込まれる可能性が減るかもしれないのです。
しかし、あなたが何もしなければ……何も変わりません。デスマーチは依然として生き残り、原因究明も対策もされず、いつものこととして流されていくのです。それは悲劇です。
あなたが辞めることは、あなたを守るだけでなく、ほかの誰かをも守るのです。胸を張って退職届を書きましょう!

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか
- 作者: エドワードヨードン
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/09/12
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (8件) を見る
*1:筆者です。