さきごろ発表された日本の労働生産性(ひとりあたりGDP)の低さが話題となっています。
日本生産性本部の茂木友三郎会長は18日、2014年度の物価変動の影響を除いた実質の労働生産性が、前年度比1・6%減となったと発表した。また、日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟国中の先進主要7カ国の中で最も低い。
勤勉さだけでは改善できない日本の低い労働生産性 | ロッシェル・カップ
生産性が低い低いと言われて久しいですが、どうも改善されるには時間がかかりそうですね。OECD加盟国全体の中でどれくらいの位置につけているのか、日本生産性本部のウェブサイトに掲載されているグラフを見てみましょう。

34カ国中21位。ずいぶん低いですねぇ……ってあれ?
どちらのグラフにも、日本のすぐ下にニュージーランドがいますね。なるほど、ニュージーランドの生産性は日本と同じくらい低いということですか……。主要産業や経済の規模も違いますし、一概に比較はできないのでしょうが、気になるデータです。
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NZではあまり話題になってない?
ネットニュースを見る限り、どうもニュージーランドでこの事実はさほど大きく取り上げられていないようです。もっとも最近のニュースで見つけることができたのは1年前のこちらの記事。「ニュージーランドの生産性は依然として低迷」というタイトルです。
これに関連して、Productivity Commission of New Zealand から発表されたインフォグラフィックスが、なぜニュージーランドの生産性が低いのか?についての見解を示していますので、ここに引用してみます。
出典: http://www.productivity.govt.nz/sites/default/files/international-perspectives-infographic.pdf
理由1: 地理的に不利な位置にある
そもそもニュージーランドは人口が400万人しかいないので、国内マーケットだけで経済を回すのは大変です。ので、GDPを増大させようとすると製品をどんどん輸出したい。しかし、南半球の端っこに位置する島国であるニュージーランドでは、物流にかかるコストが他の国よりも増大します。さらに、大規模なマーケットであるアメリカ、ヨーロッパ、東アジアといったエリアが全部遠いところにあるのもつらい。
そんなわけで、低い生産性の半分以上は「国際的なつながりの弱さ」で説明できるというのが Productivity Commission の意見です。積極的にグローバルバリューチェーンに参入することが解決のために必要、と提言されていますが、輸送のためのエネルギーコストがガツンと下がらないかぎりはなかなか厳しい気がします。
理由2: 革新的産業の未発展
生産性を上げるには少ない労働力で高い価値を生み出せばいいわけで、その筆頭がIT企業。ニュージーランドでがんばってるIT企業といえば、ヤフオクやeBayを退けて国内のネットオークション市場を独占している Trademe なんて企業がありますが、海外市場への進出は無いに等しいので、まだまだこれから。

ニュージーランド人なら一度は使ったことのある Trademe。本から家までなんでも買えます。
ニュージーランドは、ビジネスを始めやすい国ランキング1位に選ばれており、ITエンジニアを永住権申請などで優遇する政策をとってもいます。これらの実績と試みが、いずれ世界的な企業をニュージーランドから生み出すことになる……といいのですが。
理由3: 労働者のスキルが低い
「有能な労働者をどんどん呼ぼうぜ!」ってのが解決案だそうです。このあたりの思い切りの良さが、小国ニュージーランドらしさってとこでしょうか。日本も移民受け入れ政策に舵をとって、できる外国人に働いてもらうだけでも、生産性が向上するんじゃないかと思います。
いずれNZが日本を抜くかも
最後に、2000年代における、両国のひとりあたりGDPのグラフを掲載しておきましょう。上が日本、下がニュージーランドです。
source: tradingeconomics.com
source: tradingeconomics.com
伸びの鈍化する日本に対し、ゆるやかに右肩上がりのニュージーランド。このままだと近い将来、この順位が逆転する可能性が高いです。ニュージーランドは人口が増え続けているし、移民誘致、観光客誘致も積極的に行っているので、日本が何も対策を打てなければ現実的に有り得る話だと思います。
人口も少ない、地理的にも不利、そんな南半球の小国に負けてちゃだめっすよ、がんばれ日本。さっさと残業の無い国になるのだ。