ニュージーランドには、世界一急な坂道という二つ名をもつ通りが存在する。ごく普通の住宅街に位置するただの坂道にすぎないが、そのインパクトゆえ観光名所として人通りの絶えない人気スポットになっているのだ。
いったいどんな道なのか? 好奇心に駆られて足を踏み入れてみたら、命の危険を感じるほどの恐怖が待っていた。
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最大勾配35%!
「世界一急な坂道」はその名をボールドウィン・ストリート(Baldwin Street)という。ニュージーランドで5番目に大きな都市、ダニーデン郊外の住宅街に位置している。
ただ急な坂道なだけなら登山道などを探せばいくらでもあるはずだが、この道路が特殊なのは、人々が日常的に使用する生活道路なのに、斜度がむちゃくちゃキツイという点だ。しかも、一箇所だけ急というわけではなく、めちゃめちゃ急な坂道が70メートルに渡って続く点でも、世界に類を見ない異常な道路だと言える。
その最大勾配は、実に35%!! これは、自転車ではプロの選手でも登れないほどの傾きだそうだ。……怖くね?
実際に登ってみたら死ぬかと思った
とはいえ。いくらキツイといっても、しょせんは坂道である。
周辺の人たちは普通に使う道でもあるし、事前に調べたところ、ジョギングしている人もいるそうだ。運動にはちょうどいいんじゃないの、くらいの軽い気持ちで登ってみることにした。
さっそくご覧いただこう! これがボールドウィン・ストリートです。

道路の色の変わり目辺りから、ものすごい勢いで傾斜が始まっているのがわかるだろうか? 実際に目の当たりにしてみると、遠近感がついていかなくてクラクラするほど。
でもね、坂の下から見てるぶんには全然余裕なんである。まぁ、言うてもただの道ですから? 別に登山するわけでもないんだし。

色の変わり目の手前部分。このあたりはまだまだ平気。

が、ただの坂道のはずなのに、突然階段が現れる。にわかに「これ、ヤバイんじゃね?」という空気が漂い始めた。

ふと脇を見ると、家と坂道との位置関係がもうだいぶおかしい。

気まぐれに「階段ばっかり登っててもつまんないかな」と反対側に移動したのだが、これが大間違い。坂道部分は階段より数倍速で疲れがたまるので、全然足が前に進まない。たかが坂道とかナメててすみませんでした。これ登山だよ、登山。
なお、やたらカメラの位置が低いのは、すでに腰を落としてないと転げ落ちそうなくらい疲れきっているからです。170cm、54kg のもやしにはレベルが高すぎた。
ではここで、頂上付近からの眺めを動画でご覧ください。
実は、上の動画で僕が立っている側は坂の頂上に着く前に行き止まりになっていた。登りきるためには向こう側に渡る必要があったのだけど、一歩足を踏み出そうとするたびに自分の本能が「死ぬぞやめとけ」とアラートをがんがん鳴らしてきて、結局横断することができなかった。
泣く泣く傾斜のゆるい場所まで下ってから、反対側に渡り直し、なんとか頂上までたどり着いたという始末。まさか、ただの坂道で命の危険を感じるとは……。もう二度と行かんぞ。
どうしてこんな坂道ができちゃったの?
それにしても疑問なのは、なんでこんな極端な坂道ができあがってしまったのか? ってことだ。普通だったら、こんなところに道作らないでしょ。
歴史をひもとくと、ダニーデンという街の成り立ちにそもそもの原因があるらしい。
ダニーデンに限らず、ニュージーランドの街の多くは、実際の地形を無視して都市計画が進められた。地図上に機械的に引かれた道路を実際に作ろうとしてみたら、とんでもない傾斜の道ができてしまった、というわけ。(参考 Baldwin Street Dunedin NZ – Baldwin Street in Dunedin New Zealand)
なるほどね〜……って、バカなの?? おかしいだろ! 工事の時点で誰か止めろよ!! ニュージーランドの工事っていろんな意味でいい加減だなってよく思うんだけど、どうやらその気質は随分と前から変わっていないらしい。いやいや、恐れ入りました。
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