ニュージーランドに移住する方法のひとつとして、技能移民(Skilled Migrant Category) としてワークビザを獲得し、永住権に切り替えるというやり方があります。
中でも需要が高く、ほぼ確実にビザが降りるのがIT系の仕事。
ニュージーランドは日本に比べてワークライフバランスが確保されていることもあり、人気のある業界です。
中には、ITエンジニアになれば永住権に有利だからという理由でまったくの業界未経験からIT業界を目指す人もいます。
そして、現実としてキャリアチェンジ組の多くは失敗に終わっていることは以前日本人エンジニアの方へのインタビューでもお伝えしました。

しかし、未経験からIT業界への転職を成功させている人も少ないながらいるわけです。
そういった方の経験を聞けば、何がいったいそんなに難しいのか、乗り越えるべきポイントはどこなのか、より具体的に見えてくるのではないか?
……ということで、オークランド在住のエンジニアで、業界未経験からの転職を経験した、ももかさん(仮名)にインタビューをさせていただきました!
仕事を得るまでにどんな準備が必要だったか、リアルな就活の体験談など、詳細に語っていただけました。ニュージーランドのIT業界や、ニュージーランド移住に関心のある方には役に立つ内容になっているはずです。
それではどうぞ!
Contents
テストの専門家として活躍中
※コントラクター(Contractor) ……数週間〜数ヶ月など、期間を定めて契約を結ぶ雇用形態。パーマネント(Permanent)と呼ばれる正社員とは区別される。
ニュージーランドで2度のリストラ! 未経験からITに挑戦することを決意
その後イギリスではコールセンター業務、ニュージーランドでは、語学学校の事務手続きと日本人カウンセラーの仕事、そのあとはライセンスを扱う会社3社で働きました。
特にキャリアの方向性があったわけではなく、その時に見つかった仕事をしていた感じです。
本人の能力の問題というよりも、マネジメント上の流れで起こることが多いです。
1度目は会社が請け負っていた契約を失い、会社としての仕事自体がなくなったので順番に解雇されていき最終的には会社も閉鎖。
2度目は大きな組織変更に伴うもので、これは予想しておらず、けっこうショックでした。
テストの仕事につく前は、日本語ができることが有利となる仕事をしていましたが、そういう求人には限りがあります。また事務の仕事は競争率も激しく、ネイティブスピーカーのほうが有利です。いろいろ考えた結果、テストアナリストの経験のある主人のアドバイスもあり、ソフトウェアテストの仕事をやってみることに決めました。
学校へは通わず、独学でテストアナリストの資格を取得
通うことも検討しましたが、自分に知識を蓄えるという意味ではいいかもしれませんが、就職に結びつけるためにはそんなに役にたたないというアドバイスをもらったからやめました。
代わりに、独学でソフトウェアテスティングの概要を学ぶために、ISTQB Foundation Exam (※)について勉強をして、資格をとりました。
NZではすべてのIT技術者は専門職ですから、ほんとうに資格も学歴もないまったくの素人では相手にしてもらえないですもんね。
※ ISTQB… International Software Testing Qualifications Board. 国際的なテスト技術者の認定組織 (公式サイト)。日本で活動する所属組織にはJSTQB、ニュージーランドおよびオーストラリアにはANZTBがある。
未経験ではとにかく仕事が見つからない! 「コネクション」と「売り込み」が最後の決め手に
経験なしでテストアナリストになる方法としては、会社の別の部署にいてビジネス知識やシステムについて理解がある人が転向していく場合や、大手のテストコンサルタント会社のグラジュエイト・プログラム(※)に採用されるなどがあります。
でも、いずれも狭き門です。
求人情報サイト経由での応募ももちろんやりましたがほぼ全滅だったように思います。
最終的に仕事が見つかったのは、紹介してもらえるコネクションがあったから、自分を売り込んで熱意を買ってもらうことができたからでしょうか。
※ グラジュエイト・プログラム… 大学や専門学校を卒業したての学生を対象とした採用方式。
ちなみにそのお仕事はどのような方からの紹介だったんでしょうか?
その会社はちょうどキャリア変更組を何人か雇っているところで、無事に初めてのテストアナリストという仕事にたどり着くことができました。
貴重なお話をありがとうございました!
未経験からニュージーランドのIT業界を目指す人へのアドバイス
ももかさんの体験談をお聞きして、ニュージーランドで就職するために必要な3つの要素が、あらためて浮き彫りになってきたように感じました。
すなわち次の3つです。
- 熱意をアピールできる英語力
- 資格・学歴・職歴など、熱意を形にする力
- 自分に合ったポジションに出会うための人脈と運
これらすべてがそろった状態で海外移住に挑戦できる人などほとんどいません。
皆何かしらの形で、限られた時間の中で足りない部分を伸ばしていかざるを得ないんですね。
ゼロからでもなんとかなるかな〜と楽観的に考えている人は、この3要素を頭においた上でもう一度ももかさんのインタビューを読み返して、自分の今の立場と比べてみてください。
何が足りていて何が不足しているのか、それが今後の行動の指針となるはずです。
最後に、ももかさんに未経験からニュージーランドのIT業界を目指す人へアドバイスをいただきましたので、そちらをご紹介します。ももかさん、ご協力ありがとうございました!
私は英語圏で暮らし始めて15年です。海外での留学経験等はないまま、イギリスに引っ越したので、最初のころは英語でのコミュニケーションに自信がなくて苦労しました。
今でこそ日本人の友人もいますが、はじめの頃はほとんど英語を話す人ばかりの中で暮らして、英語環境の中で意思疎通をして仕事を進めていく事ができるという土台をだんだんと作っていきました。そのうえでのIT業界へのキャリアチェンジという部分で本当に苦労をして、現在も進行形で現場で知識を吸収しつつ、なんとか踏ん張りながら頑張っています。
NZに来てすべてを新しく始めるのは非常に難しいと思うので、まず日本でITの仕事の経験を積んだほうがよいかもしれません。
ビジネスレベルの英語力は必須
英語力は必須です。読み書きができ、会話が成立するレベルではなくて、ミーティングに参加して大勢の人の話し合いを理解できて、そのうえで自分の意見を述べるところまで必要になってくると思います。
現在NZのIT業界はアジャイルが流行っているので、さらにチームメンバーとのコミュニケーションが重要になっていくと思います。レトロスペクティブやスプリントプランミーティングで意見を述べる必要がある機会も増えます。
コミュニケーション能力を身に着けよう
2度目のリストラ後に、1年間思いきって働かないという選択をし、国籍や年齢の異なるいろいろな人と知り合って話をするようにしたり、子どもの学校のボランティア活動に積極的に参加して、社交性を磨いたりしたのが、今はすごく役に立っています。
ニュージーランド、特にオークランドは多国籍なので働きかたも人によって様々です。日本とは異なる社風や異文化に柔軟に対応していけることも必要だと思います。
おわりに
move out of your comfort zone をいつも念頭に。自分の心地よい枠をちょっと超えて挑戦し続けると、今後も成長し続けることができるんじゃないかなと思っています。