こんにちは、はっしー(@hassy_nz)です。
今日は、親を日本に残して海外に住んでいる人にぜひ読んでほしい小説を紹介します。
中島京子さんの『長いお別れ』です。
特に、親が60歳を過ぎてきた方には感じるところの多い作品だと思います。
Contents
『長いお別れ』のあらすじ
東家の父・昇平は、中学校の校長や図書館長を務めた地元の名士。
しかし10年ほど前からアルツハイマー型認知症をわずらい、少しずつ物忘れがひどくなっている。
介護をしている、妻の曜子とのふたり暮らし。
夫婦には娘が3人いて、長女の茉莉は夫の仕事に付き添ってアメリカ生活、次女の菜奈には菓子メーカー勤務の夫と幼い息子がおり、三女の芙美は独身のフードコーディネーター。
自宅の場所や家族の顔、そして言葉さえも少しずつ忘れていく昇平。
彼の病気にときに翻弄され、ときに人生への気づきを得ていく家族の暮らしを、あたたかくユーモラスに描く連作短編集。
『長いお別れ』の感想。思ったよりも明るい、穏やかな作品だった

『長いお別れ』のテーマになっているのは認知症……つまり「ぼけ」です。
教員という知的な仕事についていた父親が、ものをだんだん忘れていき、最後には子供のようになってしまう。
おまけに昇平を介護しているのは妻の曜子、つまり「老老介護」です。
だから昇平の病気が進行するにつれてどんどん話が暗くなっていくんじゃないかと思ったんですよね。
でも、ぜんぜんそんなことなかった。
どれだけトラブルが発生しても、東家はゆる〜く協力して(姉妹の中に温度差があるし”一致団結”という感じではない)問題を乗り越えていく。
だんだん赤ん坊に返っていく昇平と、彼の面倒を見る一家をあたたかく見守る雰囲気が、物語を通して一貫しているのがすごくよかったですね。
海外に住んでる身にとっては考えさせられる作品
僕はいま、日本とは地球の反対側のニュージーランドに住んでいます。
両親はともに60代でまだ元気ではあるものの、これからどんな病気になるかわかりません。
そんな立場で『長いお別れ』を読んでみると、「お前はこの先ずっと海外に住み続けるのか?」という問いを突きつけられている気分になりました。
なかでも長女の茉莉がアメリカ西海岸に住んでいるという設定で、すぐに駆けつけられない自分の立場に悩んだり、東日本大震災のニュースにパニックになったりする場面があります。
これが2020年現在のコロナショックと見事に重なるんですよね。
なかなか思い切った対応策を打ち出せない日本政府、そんな国に住んでいる両親、そして国境封鎖のため日本に戻ることすらできない自分。
海外に住むっていうのは、家族の一大事に駆けつけられないリスクと隣り合わせなわけです。
しかも僕はひとりっ子なんですよ。
東一家は子供が3人いて、それぞれ力を合わせながら昇平の介護をしていますけど、自分の場合はひとりでなんとかするしかない。
もし親の面倒を見なくてはならなくなったとき、『長いお別れ』のような穏やかな介護になるのかどうか。
やっぱり考えちゃいますね。

『長いお別れ』で好きな一節を紹介します
ええ、夫はわたしのことを忘れてしまいましたとも。で、それが何か?
認知症が進み、曜子の名前も、彼女が自分の妻であることも忘れてしまった昇平。
そんな状況を見かねて「もう、あなたのことも誰だか忘れちゃってるんでしょ? たいへんねぇ」と声をかけてくる人々に対する、曜子の心情をあらわしている文章です。
昇平はたしかに曜子が誰だかもう覚えていないのですが、曜子がいないと不安になって周りを探し回るし、目線でコミュニケーションを取ろうとしてくるんですよね。
パートナーから記憶や知性が失われても、ずっと築いてきた関係性がなくなるわけではない。
曜子から昇平への愛情や、ふたりで歩んできた人生への誇りが感じられる、とても好きな一節です。
介護が必要になったとしても、それまでの人生が素晴らしいものであったなら、さほど悪くはないのかもしれませんね。
歳を重ねた両親のいる方、特に両親と離れて暮らしている方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。
将来親の介護をすることになったときのための”心の準備”としてもいい読書体験になると思います。
映画版もあります。
最後に、この本をおすすめしてくれた台湾のにゃも(Shohei192)さん、ありがとうございました!
海外在住者の一番の悩みは、歳をとっていく親。そして、何かがあった時に駆け付けられない葛藤。
思いやり力が強い人ほどこの悩みは尽きないと思う。ちなみに、この本を読むとさらに親の介護について考えさせられます。 https://t.co/zyMYYZRJxY pic.twitter.com/MbJHUEHBdZ
— 台湾にゃも@台中に語学学校6月開校予定🇹🇼 (@Shohei192) April 23, 2020