僕は2014年からニュージーランドのリンカーン大学に留学し、Graduate Diploma of Software & Information Technology というコースを履修しました。単位は2015年7月に取り終えたのですが、なんと卒業式は10ヶ月後の2016年の4月に行われるということで。先週の金曜日、式典に参加してきました。

この帽子が「海外の卒業式だー」って感じしますね。あと「天才クイズ」を思い出す(年齢と出身地がバレるわ)。
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卒業式は専門家として認められるための儀式
実際に式典に参加してみて、日本の卒業式との意味の違いを強く感じました。
式典の開始時、卒業生は帽子を手に持った状態で入場します。まだかぶることはできません。そしてひとりずつ名前を呼ばれて壇上に上がり、学長と笑顔で握手。学位記を手渡され、その後にようやく帽子の着用が許されるという流れになります。

あのフサフサのついた黒い帽子は、いうまでもなく学問の象徴です。つまり、式を経て、学位をもった一人前の専門家として扱われるようになる、それがニュージーランドの卒業式なのです。
でも日本ではどうでしょうか? 学部や大学院で専攻した内容を活かして就職する人はほんの一部で、大部分はまったく未経験の仕事に飛びこんでいきます。卒業式は「あなたの学生生活はこれで終わりです」と告げられるセレモニーでしかありません。その先に繋がるものではないのです。
また日本では「いつまでも学生気分でいてはいけない」「社会人としての意識を身につけろ」といったことがよく言われますよね。つまり新卒はまだ何もできない存在、半人前だと位置づけられているわけで、だから会社に入ってもすぐには現場に放り込まれず、新入社員研修を施されるんですね。
しかし少なくともニュージーランドでは、学部卒でも大学院卒でも、高等教育課程を修了し専門知識を有する存在として社会に出ていく。だから求人募集にも「未経験歓迎」なんて文字はいっさいありません。すでにそれなりの知識と技術を持ち、即戦力として活躍することが前提になっているのです。社会からはらわれる敬意が全く違うなと感じました。
日本の大学生ってバカにされてない?
少し前に、なかば恫喝や洗脳のような手法で新入社員研修を行う会社が炎上していました。この研修では、新入社員に自分の会社の社長の名前や理念を覚えているかテストし、答えられなかった場合は「皆さんの会社は採用ミス」などと、新入社員に採用する価値がなかったかのような言葉を投げかけ、あまりの厳しさに泣き出す参加者もいたとのことでした。
このニュースを卒業式の最中に思い出して、実にフクザツな気分になってしまいました……。大学を卒業して学位を取得したのは同じなのに、かたや一人前の専門家としてみなされるのに対し、かたや学部での勉強内容や成績などほとんど顧みられず、半人前の社会人として再度教育させられる。
日本の大学生ってなんだかバカにされてませんかね?? この扱いの違いはいったいなんなんでしょう?
ひとつヒントになるのは、大学の進学率です。日本では「大学全入時代」と言われるほど、大学進学が一般的なものになっていますが、ニュージーランドでは高校から大学への進学率は30%程度だそうです。
また2013年の国勢調査では、15歳以上の人口のうち、学部卒(Bachelor)以上の学歴をもつ人の割合は20%程度となっています。

(出典: 2013 Census QuickStats about national highlights)
ニュージーランドでは大卒以上の知識と技術を有する人材は貴重であり、だからこそ一人前のプロフェッショナルとしてむかえられるし、相応の給料も与えられるのではないでしょうか。
翻って日本では、学士という経歴に価値はなく、十把ひとからげに20xx年卒の新入社員として扱われ、安い給料で働かされる。それならもはや日本の大学で勉強する意味などなく、もっと大学で学んだことを評価してくれる国の学校を出たほうがよほど有益なのではないか。
そんなことを考えさせられた、ニュージーランドの卒業式でありました。